古く中国では、有力者が亡くなると「魂(こん)」と「魄(はく)」に分けて祀る風習がありました。魂は人の精神をあらわし、魄は肉体を意味します。魂はお廟(びょう)に、魄はお墓に納めたと伝えられています。
この考え方は、私たちの「本堂」「お仏壇(お内仏)」「お墓(納骨堂)」の関係にも通じるところがあるように思われます。
お墓・納骨堂
お墓や納骨堂は、亡き人の肉体(お骨)、またその姿・思い出に手を合わせる場所です。
そこでは、共に過ごした日々を偲び、亡き人の歩みを思い起こします。
形あるものを通して、その方の存在を身近に感じさせていただく場です。
お仏壇(お内仏)
お仏壇は、亡き人の魂、すなわち精神や願いの背景にお参りする場所です。
阿弥陀さまの御前に手を合わせるとき、亡き人がどのような願いのもとに生きてこられたのか、その根底にある心を確かめる場でもあります。
お仏壇は、家庭における小さな「本堂」とも言えるでしょう。
本堂
本堂は、個々の亡き人のためだけでなく、すべてのいのちを仏の光のもとに照らしていただく場所です。
そこでは、私たちがいのちをいただいて生きていること、支えられていることを聞かせていただきます。
お墓で亡き人を偲び、お仏壇でその願いを確かめ、本堂でその願いの根源――阿弥陀さまの本願――に遇わせていただくのです。
お念仏の中での再会
私たちは、身近な方が亡くなられたあと、その肉体にお会いすることはもう叶いません。
けれども、お仏壇に手を合わせ、お念仏を称えるとき、亡き人の魂に、精神に再会することができます。
お念仏は、亡き人の本懐――すなわち阿弥陀さまの願いと一つになったいのち――に私たちを導き、今を生きる私たちを照らしてくださるのです。
福岡県田川郡香春町 真宗大谷派 西念寺