葬儀社の選び方――互助会を利用する前に知っておきたいこと

葬儀社の選び方をテーマにした青色背景のアイキャッチ画像。互助会利用前に知るべきポイントを示すテキストとチェックリストのイラストが配置されている。

近年、葬儀についてのご相談が増える中で、「互助会に入っているけれど、実際はどうしたら良いのか」という声をよく耳にします。月々の掛金を支払っていれば、いざという時に“安く”葬儀ができる――そのように思われている方も多いのですが、実際には互助会を利用することで総額が想像以上に高くなるケースが少なくありません。

■ 互助会の仕組みと「誤解」

互助会とは月々の掛金を積み立て、将来の冠婚葬祭に備える制度のようなものです。ただ、掛金は「割引」ではなく「前払いの一部」であり、プランに含まれているのはごく基本的なものだけです。搬送費、ドライアイス、式場使用料、会葬礼状、返礼品、料理などはすべて別料金になります。

そして、この追加料金が意外と高額になり、
「互助会を使ったのに、思ったより高くついた」
というご相談があとを絶ちません。

■ 比較ができない不利さ

互助会を利用すると、団体が指定する葬儀社・式場に限られるため、本来できるはずの「複数社の比較」ができません。競争原理が働かず、オプション価格も「その会社の値付けに従う」以外の選択肢がなくなるのです。

もちろん互助会そのものが悪いわけではありません。ただ、仕組みを理解していないと、気づかないうちに「高い買い物」になってしまうことがあるのです。

■ 葬儀はもっと自由でよい

● 家族・親族だけなら「お仏壇の前」で十分に尊い

ごく親しい家族・親族だけであれば、
代々お参りを続けてきたお仏壇の前で手を合わせるだけでも十分です。

お仏壇はその家の歴史を照らしてきた場所。形式にとらわれず、静かに故人を偲ぶことができます。

● 4〜50名ほどなら、お寺の本堂で荘厳に勤められる

30〜50名ほどの規模であれば、代々ご縁のあるお寺の本堂で十分に荘厳な葬儀ができます。

お寺は法要・葬儀のために整えられた場所であり、外部から高額な祭壇を持ち込む必要もありません。そのため、葬儀会館の会場費や祭壇費という高額になりがちな部分を抑えることができます。

■ 自宅での葬儀という選択肢もある

近年は、自宅で静かに送りたいというご家族も増えています。自宅葬には、費用面でも大きなメリットがあります。

● ① 司会や案内役が不要であれば「直送に近い費用」で受けてくれる葬儀社もある

まれにですが、
「通夜・葬儀に司会やお手伝いを入れないなら、直送(火葬式)と同じ料金で受けます」
という葬儀社があります。

直送費用の相場は、
・おおよそ12〜13万円以下
という非常にシンプルな金額で、ご家族中心の手作りの葬儀が可能です。

もちろん参列が多くなると統制は難しくなりますが、それも「昔ながらの手作りの葬儀」として自然な姿と言えるかもしれません。

● ② 司会・案内役をお願いしたい場合でも「25万円以下」で収まることがある

司会・受付・案内など最低限のスタッフをお願いする場合でも、地域の良心的な葬儀社であれば、
25万円以下
で通夜・葬儀を整えてくれます。

葬儀会館を借りないことで、会場費・祭壇費・管理費がかからず、総額を大幅に抑えることができます。

■ 注意点:安いプランだと思ったら「1日葬」だったというケースがある

最近増えているのが、
「この金額なら通夜・葬儀ができます」
と案内されたので契約したところ、実際には――

  • その金額は「葬儀のみ」の料金だった
  • 通夜は別料金だった
  • 結果として「1日葬」扱いになっていた

というケースです。

つまり、直送の話だけではなく、通常プランでも「通夜が含まれていない」という誤解が起こりやすいのです。費用を抑えようとしたご家族ほど、こうした誤解が生じやすく、あとになって「説明と違った」と感じられるケースが多くあります。

そのため、

  • 通夜は料金に含まれているのか
  • スタッフは何名つくのか
  • 式場利用の範囲・時間はどうなっているのか
  • どこからが追加料金になるのか

このあたりを事前に丁寧に確認しておくことが大切です。

■ 参列者が多い場合でも、お寺や自宅で無理なく勤める方法

お寺や自宅で葬儀をしたいものの、参列者が100名以上になる場合、全員を同じ空間に収容するのは難しくなります。そのようなときにおすすめしたいのが、

「お勤めは家族・親族のみで行い、一般参列者には別の時間帯を提示して焼香のみ案内する」という方法です。

お勤めの時間は家族・親族で静かに過ごし、その前後の時間に一般参列者へ焼香に来てもらうことで、大きな会場を借りる必要がなくなり、費用負担を大幅に抑えることができます。

これは決して簡略化ではありません。故人との時間を守りつつ、現実的な負担を軽くする合理的で優しい方法です。

■ お寺としておすすめしたい葬儀社の選び方

最後に、お寺としておすすめしたい葬儀社選びのポイントを挙げておきます。

  • 事前見積りを丁寧に出してくれる会社
  • 必要のないオプションを勧めない会社
  • 地域での評判が良い会社
  • 遺族のペースに合わせてくれる会社
  • 総額や内訳をわかりやすく説明してくれる会社

葬儀は、心が揺れる中で決めなければならないものです。だからこそ「急がされないこと」「納得して選ぶこと」がとても大切です。

■ 「もったいないから使う」より、「納得できる送り方」を

互助会に入っているからといって、必ず利用しなければならないわけではありません。自宅のお仏壇の前で、あるいはご縁のあるお寺の本堂で、静かに手を合わせる。それは決して簡素ではなく、心のこもった、清らかな送り方です。

「自分たちの暮らしに合った葬儀のかたちを、納得して選ぶこと」。その一助として、互助会の解約・返金という選択肢や、お寺・自宅での葬儀という方法があることを知っていただければ幸いです。


福岡県田川郡香春町 西念寺

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